新スタジアム建設について(スタジアム総合戦略推進室長 
信江雅美)

 皆さん、こんにちは。スタジアム総合戦略推進室長の信江です。コロナ禍の影響により、今年はサポーターズ・カンファレンスを開催することができず、スタジアム建設について、直接、サンフレッチェファミリーの皆さんにご報告できないことを残念に思っています。

 さて、前回のサポーターズカンファレンスは去年の1月25日に開催しましたので、それ以降の動きについて説明します。

 まず、1月30日に、市長、県知事、商工会議所会頭、及び当社久保会長の4者で構成する第1回サッカースタジアム建設推進会議が開催され、「中央公園サッカースタジアム(仮称)基本計画(素案)」がとりまとめられました。その後、広くヒアリングを実施し、その結果を踏まえ、3月30日に開催された第2回建設推進会議で、正式に「中央公園サッカースタジアム(仮称)基本計画」が策定しました。

 同基本計画に基づき、民間事業者からの意見収集や国内事例の視察等、調査分析をおこなったうえで、「サッカースタジアム等整備事業募集要項素案」をとりまとめ、DB(デザイン・ビルド)事業者公募に関心のある事業者を対象に8月24日に事前開示し、公募指針についてのさらに具体的な意見を募集しました。これは、事業公募に先立って、応募を検討する事業者に、早い段階で情報提供を行うことで、その後の応募に向けた十分な準備を行っていただき、より良い提案がなされることを期待するものです。

 9月の市議会では、2021年から2024年の債務負担行為257億4,000万円の設定が全会一致で議決承認されました。

 10月2日には「第1回サッカースタジアム整備等事業者選定審議会」が開催され、7名の外部審議委員により、事業者公募に係る技術提案書の審査基準等の審議が行われ、いよいよ10月22日には、サッカースタジアム、ぺデストリアンデッキ、公園の基盤整備のDB(設計施工)について事業者募集が公示されました。DB事業者公募は2月16日に締め切られた後、今年度中に優先交渉権者が決定します。

 一方、広場エリアは、1月19日に、Park-PFI事業者を対象に、「中央公園広場エリア等整備・管理運営事業公募設置等指針(素案)」の提供が開始になりました。

 先般、1月25日、第3回サッカースタジアム建設推進会議が開催されました。市長、県知事、商工会議所会頭、当社会長に加え、今回から県サッカー協会会長が出席し、5者により、スタジアムパークの整備等の取り組み状況、主にスケジュールや資金調達等に関して協議がおこなわれ、2024年開場などのスケジュールと総額約270億円の事業費の財源について確認がなされました。

 約270億円の事業費の内訳はスタジアム整備に257億円、埋蔵文化財発掘調査に8億円、広場整備に3億円など。財源は国庫補助金80億円、寄付金63億円、使用料収入を償還財源とする市債27億円、県・市の負担100億円となります。

 建設推進会議の中で、県はDB公募で選ばれた事業者のスタジアムパークプランが、県全体への波及効果が認められ、県全体の活性化に繋がる計画であることを確認した後、応分の負担をする方針を示しました。

 事業主体である市は2020年度補正予算案と2021年度当初予算案に設計費などを合わせて約60億円の予算を計上する方針を明らかにしました。そしてその後、実際に、2020年度補正予算案として、サッカースタジアム建設の推進費用18億8,400万円、サッカースタジアム建設基金への積立金16億2,300万円(一般補正)。また、2021年度当初予算案として、54億3,071万6,000円が計上されています。

 今後、DB事業者公募は2月16日に提案が締め切られ、今年度中に優先交渉権者が決定。仮契約の後、6月の市議会の承認を受け、DB事業者との本契約が締結されることになっています。優先交渉権者に選ばれたDB事業者は直ちに設計を開始し、2022年から2023年に建設工事を行い、2024年度Jリーグ開幕からの運用を目指します。

 一方、広場エリアの公募は来年度早々に開始される予定です。事業者選定の後、来年度中には広場エリアにおいても設計施工が始まります。広場エリアは、従来型の公共事業とは異なる官民連携(PPP)のひとつPark-PFIという手法で整備されます。

 ところで、我が国では、少子高齢化が急速に進んだ結果、2008年をピークに総人口が減少に転じています。現在、総世帯数は単独世帯の増加にともない増加傾向にありますが、将来的にはこれも減少に転ずるものと思われます。

 少子高齢化対策は国全体の問題ですが、一方で、地方では、子育て世代の「住みやすさ」を実現することで、年少人口や生産年齢人口の増加を図ろうという動きが顕著です。過疎化に苦しんでいる町村が移住促進のために様々な施策を打ち出していますが、同じことが都市部でも起きています。子育て世代に居住してもらうための魅力ある環境整備は、地方創生に欠かせないテーマと言えるでしょう。広島県が魅力ある地域であり続けるために、その中枢都市として広島市が中枢性や拠点性をさらに高めていくことが重要です。

 スタジアムパーク構想は、アフターコロナの時代を見据えて、世界に誇れるサッカースタジアムを中心に、広域的に多世代の人々を惹きつける魅力的な施設や機能が集積した公園空間を整備し、広島都心部の回遊性を高めるためのプロジェクトです。

 まず、遊びに行きたいと思える魅力を創造する。そしてここで働きたいと考え、広島に住みたいと考えていただく。そして最終的には「暮らしたい」、つまり自分の人生を広島に置いていいと思えるような街に成長すること。「スタジアムパーク プロジェクト」は、広島を「遊びに行きたい」「働きたい」「住みたい」、そして最終的には「暮らしたい」街にしていくことで、広島の都市格の向上につなげていこうというものなのです。

 当社が構想しているスタジアムパークには、特徴のある7つのゾーンがあります。

 まず、「サッカースタジアム ゾーン」。スタジアムパークの中核施設であるサッカースタジアムはサンフレッチェのホームスタジアムであり、選手・チームにとって最新最適な試合環境を実現するということはもちろんのこと、試合を観戦される観客の皆さまに、一流の観戦環境を提供します。Jリーグのスタジアム基準を満たすだけでなく、国際試合に対応する世界水準の機能を備えた施設です。

 下段スタンド最前列席を競技や多目的活用や通風等に支障ない限りの範囲でピッチに近く配置することや、上段スタンドの傾斜角を適正にとることにより、後方席からでも比較的ピッチを近くに感じられる、迫力ある観戦環境を実現し、サンフレッチェファミリーやサッカーファンにとって十分に満足いただけるものにしたいと考えています。

 一方で、このスタジアムでは、初めてサッカーの観戦にいらっしゃったお客様、初めてスタジアムを訪れた方がストレスなく思いっきり楽しめ、繰り返し行きたくなる空間を実現します。高品質なサービスを提供するVIPルーム、プレミアムラウンジなどのホスピタリティエリアを備えることは当然ですが、一般シートにおいても、前後左右に十分な余裕が感じられる快適さが求められます。また、グループで、家族で、カップルで、もちろん1人でも、多様な観戦スタイルで、自由に楽しめる多彩なバラエティシートを用意します。ピッチを望む周回コンコースには、魅力的な飲食店舗を多く設置。また、映像、音響、照明装置等を一体的に運用した演出により、試合以外にもエキサイティングなコンテンツを提供します。これらにより、今までにない、初めていらっしゃったお客様をメインターゲットに据えたサッカースタジアムの実現を目指します。

 また、試合日以外に一年中にぎわう施設として、日常的に利用しやすく魅力ある店舗をスタジアム内に誘致するとともに、都心部にありながら、質の高いランドスケープ(景観)を有するメリットを生かした会議室・催事場としての空間貸出、集客力のあるイベント開催などが可能な設備を整備します。

 次に、スタジアム東側の広大な「芝生広場 ゾーン」は、都会の真ん中にありながら青空と広大な芝生空間を満喫できる空間であり、日常的に「楽しい」に出会える、多彩かつ魅力的なイベント開場としても活用します。

 スタジアム東側面の「STADIUM ACCESS ゾーン」は、世界水準のスタジアムに自由にアクセスでき、スポーツコンテンツを中心に新たな魅力あるアクティビティを提案するゾーンです。

 広場南側は「PARK LIFE STYLE ゾーン」。芝生広場を活かし、広々とした公園の心地良い環境と新しい都市型ライフスタイルを提案するゾーンです。主に県民・市民に親しまれ活用されることを想定した商業集積を計画しています。

 広場東側は「HIROSHIMA STYLE ゾーン」。広島を訪れる観光客を意識し、公園の心地良い環境を最大限生かしながら、広島の様々なモノやコトを体験できるゾーンです。

 広場北側の「SPORTS & COMMUNITY ゾーン」には、子供の知育や県民の体力作り、県民・市民の健康寿命増進を意識したスポーツアクティビティ機能を配置します。

 スタジアム西側は「RIVER SIDE & WELLNESS ゾーン」。旧太田川の親水空間を活かし、リバーサイドの眺望を活用した商業誘致や、自然とのふれあいを通じて、心身の健康促進や、県民・市民の交流を促進するゾーンです。

 商業をミックスした集客力を持つ先進型都市公園としては、大阪のてんしば(天王寺公園)や大阪城公園、名古屋の久屋大通パークが大いに参考になります。また、親水空間としては、富山の富岩運河環水公園や大阪の中之島公園を成功事例として挙げることができます

 さらに、スタジアムパークは次世代の公共空間として、環境問題への配慮、ユニバーサルデザインやインクルーシブデザインの採用にも積極的に取り組みます。一例として、スタジアムの観客席に、常設の施設としては日本初の試みになる、センサリールームの設置を計画しています。

 また、感染症対策を十分考慮した設計であることも、忘れてはならない重要なポイントです。

 このような7つの魅力的なゾーンからなるスタジアムパークは、年間220万人の集客を目指します。エリア別では、広島市内から110万人、広島市を除く県内から59万人、県外から51万人。目的別では、サッカースタジアムでのJリーグ戦、国際試合、アマチュア利用等の試合日が54万人、試合日以外のスタジアムパーク全体の日常的な利用が91万人、イベントでの集客が75万人を計画しています。

 広島市の都心部に、世界に誇れるサッカースタジアムと、青空と広大な芝生広場を満喫できる憩いの空間を中心とした「スタジアムパーク」の実現を目指すプロジェクトを、当社は「HIROSHIMA スタジアムパーク プロジェクト」と名付け、12月9日に当クラブの公式サイトにある新スタジアムページを全面リニューアルし、6枚のイメージパースを公開しました。その後、12月17日にはイメージCG動画を一般公開しました。

 これらのパースやCG動画は、2020年3月30日に策定された「中央公園サッカースタジアム(仮称)基本計画」を読み込んだうえで、当社が独自の視点で作成したものです。この基本計画は、A4で91ページに及ぶ膨大なもので、多くの情報が盛り込んでありますが、一般の方々がその全てに目を通すのはかなり厳しく、情報がなかなか浸透しづらいため、具体的なイメージがなかなか共有できていません。官民連携とはいえ、公設の事業ですから、様々な手続きを踏んで、着実に進めていかないといけませんが、それでも、一般の方々にイメージを共有してもらい、今回のプロジェクトに対する関心を持っていただくことは、とても重要なことです。

 実際にこれらの映像が公開されたとき、新聞やテレビ局など多くのメディアに好意的にとりあげていただきました。サンフレッチェファミリーの皆さんだけでなく、多くの県民、市民の方々から、「完成がとても楽しみだ」「建設されたら絶対に行ってみたい」というような、ポジティブなご意見をいただき、スタジアムパークへの期待の高まりを実感しています。

 スタジアムはDB方式、公園の広場部分はPark-PFIという異なる方式で整備されますが、例えるならば、スタジアムが家だとすれば、公園広場は庭です。家と庭が異なるコンセプトであれば、ちぐはぐなものになってしまします。また、人々を魅了し、おのずから訪れたくなるようなランドスケープや、その場に身を置きたくなる魅力ある統一された世界観を持った空間であることが必要です。

 滋賀県の近江八幡市に「ラ コリーナ近江八幡」という施設があります。1872年に創業した老舗の菓子メーカー「たねやグループ」が2015年にオープンした、ショップ・カフェ・農園などで構成された複合施設です。建築家 藤森照信氏が手掛けた、建築と自然との共存を意識した空間造形は、これまで一度も出会ったことがないのにもかかわらず、どこか懐かしい居心地の良さで、年間322万人(2019年)が訪れる人気のスポットになりました。これは建築とデザインの力、魅力ある世界観で統一された空間が集客力を生む、良い実例だと思います。

 当社は、スタジアムパークが、都市(まち)に向かって、訪れる人々に対して、自由に開かれたコンセプトで構想され、多世代の方々にとって、統一された魅力ある世界観に基づいたデザインであるべきと考えています。多くの県民・市民に日常的に親しまれ、県外の方も何度も訪れたくなる魅力的な空間。周辺の原爆ドームや広島城など歴史的ランドマーク施設との調和や街の景観を十分に考慮し、国際平和都市・広島にふさわしいシンボリックなランドマークであることが望ましいと思います。

 2024年春、国際平和文化都市広島の中心に、再びスポーツの熱気と感動が帰ってきます。世代や国をこえて、人が集い、楽しみ、歓喜し、憩う、まちなかスタジアム。それは、日本で初めての都心交流型スタジアムパークとして、サッカースタジアムと公園がひとつになってさまざまな施設や多目的な機能を融合させる、新しい感動共有拠点です。

 サッカーの夢と熱狂、緑と水のやすらぎ、そして街のにぎわいが色とりどりの笑顔を咲かせ、次の時代のエネルギーとなるように。明日を沸かせる広島の元気を、ここからいっしょに創造していきましょう。

HIROSHIMAスタジアムパークPROJECT