10.16 14:00

天皇杯 決勝 vs. ヴァンフォーレ甲府
OTHER日産スタジアム

試合終了

サンフレッチェ広島 広島
1
1
ヴァンフォーレ甲府 甲府
  • 後半39分
    川村拓夢
0
前半
1
1
後半
0
0
延長前半
0
0
延長後半
0
4
PK
5
  • 前半26分
    三平和司

試合の見どころ

 初戴冠へ向けた戦いがいよいよ始まる。前身の東洋工業時代を含めれば53年前に優勝を果たしているとはいえ、サンフレッチェ広島となってからは5回もファイナルへ進出しながら、すべて無得点で敗退。いまだカップ王者の称号がない広島にとって決勝は一つの鬼門であり、乗り越えなければならない壁だ。就任1年目ながらいきなりタイトルへ王手をかけたミヒャエル・スキッべ監督はその歴史を問われ「過去は関係ない」と言い切る。まさに新時代を作るチャンスはすぐ目の前。キャプテン佐々木翔も「新たな広島の歴史を作りたい」と鼻息は荒い。
 ある意味で“天皇杯らしい”決勝となった。相手はJ2に所属するヴァンフォーレ甲府。アマチュアクラブも参加できる同大会の醍醐味の一つである、カテゴリーが下のチームが上のクラブを倒す“ジャイアントキリング”を巻き起こしてきた今大会の台風の目だ。札幌、鳥栖、福岡、鹿島。力のあるこれだけのJ1クラブを倒すのは決して簡単なことではなく、「運で勝っているわけではない」(スキッべ監督)。決勝戦という独特の緊張感を含めて、難しい戦いになるのは必至だ。
 その甲府について「ポテンシャルはある」とスキッべ監督。もともと、力のある大卒選手を発掘し、確かな戦力へと育てることに定評があるのが甲府というチームだ。柏好文や佐々木翔、今津佑太だけでなく、名古屋の稲垣祥や日本代表の主力である伊東純也も大学から甲府へ加入し、飛躍のスタートとさせた。現在も高いテクニックで攻撃のキーマンとなっている長谷川元希や荒木翔、須貝英大、野澤陸など大学から入った選手たちが主力として活躍している他、準決勝・鹿島戦で決勝点を挙げた宮崎純真という22歳の勢いあるアタッカーもいる。本来は細かいパスを繋いで相手を崩すスタイルを主体としているが、鹿島戦で見せたように堅い守備ブロックを築いてカウンターで勝機を伺う戦い方もある。今季はJ2では18位と苦戦が続くが、選手の質、チームスタイルを見てもやはり侮れない敵だ。
 ただし、広島のスタンスは当然変わらない。スキッべ監督は相手をリスペクトしつつも、「自分たちの一番良いパフォーマンスを見せることが大事。それができた時には優勝できると思っている」。今季、どんな相手にも貫いてきた前線からのアグレッシブな守備、素早い切り替え、大胆なサイド攻撃など、スキッべ・スタイルを100%の力で発揮すること。そうすれば、必ず甲府を上回れることができる。3度のリーグ優勝で付いた3つの星を「4つ目の星に」(佐々木)するために、そして新たな歴史を作るために、サンフレッチェはすべての力を注いで天皇杯を掴み取りに行く。

監督 試合前日コメント

──いよいよ明日は決戦だが?
「すごく良い準備ができた。いいフィーリングで明日を迎えられると思っている。明日は一番良いパフォーマンスが出せれば、良い結果も得られると思っている」

──直近の神戸戦から1週間、良い準備をできた手応えがある?
「すごく良いトレーニングができた。戦術的な部分もしっかり落とし込めたと思うし、雰囲気もすごく良い中で十分なトレーニングができた。明日は良い試合ができると思っている」

──これまで天皇杯では群馬と横浜FCというJ2のチームと2試合戦ったが、その経験が明日は活きるのでは?
「J2というカテゴリーに関しては全然関係ないと思っている。今まで経験してきた2試合が活きるということもない。今回のゲームも『1試合』としっかり考えながらやっていきたい。甲府はJ1クラブを相手に次々と倒してきたチームなので、明日の試合に集中することが大事になる」

──監督は常々ベストパフォーマンスを出すことが重要と言っているが、明日は特に勇敢な姿勢が必要では?
「勇敢に戦うことを含めて、すべて100%で行かないといけない。明日に向けて100%の準備をしないといけないし、モチベーションも100%でないといけない。ゲームの中でも常に100%を出していかないといけない。100%は重要なポイントだと思っている」

──甲府は天皇杯での5試合で前半に必ず点を取っているが、立ち上がりから相手が仕掛けてくることが予想されるが?
「最初から最後まで、90分、99分、120分まで行くかもしれないが、その中で常に全力で戦わないといけない」

──カップ戦の試合の入り方、進め方はリーグと違う部分はあるか?
「カップ戦はリーグ戦とは違い負けたら終わりになるし、リーグ戦は負けても次のゲームがあるので、カップ戦とリーグ戦の違いはある。ただ、決勝だからと(違いは)ない。今までも有利に試合を進められた横浜FC戦などはあったが、C大阪戦では85分まで0-1で負けていた中で勝ち抜いてきた。カップ戦の戦い方というのをしていきたい」

監督 ハーフタイムコメント

・もっと早くプレーすること。
・もっと相手の背後を狙うこと。
・オレたちのサッカーをやろう!

ゲームレポート

 サンフレッチェ広島として6度目の挑戦となった天皇杯決勝は、最後の最後までもつれる激闘となった。
 ゲームを難しくしてしまったのは前半の出来だった。「前半は甲府のほうがやりたいサッカーをやっていた」とミヒャエル・スキッべ監督が話したように、序盤からリズムに乗れない広島は、甲府の鋭い攻撃を受ける展開で推移。甲府の前線からのプレスに苦戦すると、パスが思うように繋がらず、ロングボールを蹴っては相手に拾われチャンスを作られる。すると、完全に崩されたのは26分だった。右からのCK、相手の巧みなトリックプレーでサイドを完璧に攻略されると、中央で三平和司に決められて失点。決勝戦の重圧からか、自分たちのサッカーをまったく披露できない広島は、先にリードを許す難しい展開となってしまった。その後も主導権を奪えずに前半はシュート数1本で終了。後半へ勝負を懸けることになった。
「オレたちのサッカーをしよう!」。なかなかうまくいかない前半を認めた上で、そうミヒャエル・スキッべ監督はハーフタイムに選手たちへ声をかけると、紫軍団がようやく目を覚ます。後半に入ると、ボールがスムーズに繋がるようになり、相手を一方的に押し込む展開へ。ハーフタイムにドウグラス・ヴィエイラと森島司を下げてナッシム・ベン・カリファとエゼキエウを投入していたが、さらに攻撃の圧力を強めるために70分には松本泰志と野上結貴、79分にはピエロス・ソティリウを入れてよりパワーを強めて行った。それでも甲府の粘り強い守備の前に苦戦していたが、堅守を攻略したのは84分だった。左サイドでエゼキエウが巧みなドリブルで相手を引き付けると、股抜きのパスに抜け出した川村拓夢が左足で豪快にネットを揺らしてついに同点。最後の最後で試合を振り出しに戻した。
 その後、延長戦でも甲府を圧倒してゲームを進め、延長28分には相手のハンドを誘ってPKを獲得するビッグチャンスもあったが、これを満田が外して勝負はPK戦へ。ただし、5人全員が成功した甲府に対し、広島は4人目の川村が外して勝負あり。初戴冠を目指した広島だったが、またも“鬼門”の決勝で敗れる悔しい結果となった。

監督 試合後コメント

「甲府さん、優勝おめでとうございます。前半は甲府のほうがやりたいサッカーをやっていた印象がある。後半になって我々はボールを早く、簡単に動かすことがうまくいくようになり、シュートまで行けるようになった。さらに延長戦では我々が完全にペースを握っていた。PK戦に関して言えば、勝つか負けるかというところで、すべて甲府に転がって行った。負けた我々としては、ここまでの戦いが思い出として残るだけの形になった。カップを広島に持ち帰りたいという気持ちが強かったので、今の我々は残念な気持ちで沈んでいるところ。ただ、スポーツなので勝つ者もいれば負ける者もいる。その中で負けた者として、できるだけ早く切り替えて、次のステップに進んで行くことが重要。ここでは非常に悔しい思いをしたが、しっかり切り替えて、次のルヴァンカップ決勝・C大阪戦に向けてやっていきたい」

──前半は甲府のほうが広島がやりたいサッカーをやっていたが、なぜ広島はあのような前半を過ごしたのか?
「甲府は深く守っていたことで、我々が思ったようなスペースができなかった。また、自分たちのボールロストから相手に多くのスペースを与えてしまった。そのため、相手のほうが良いサッカーができたのではないか」

──J2の相手となったが、J1クラブとの違いについて感じたことは?
「その差はほとんどないと思っている。日本の選手たちは基本的に学校やクラブなどで良い育成がされている。プロリーグで活躍している日本人選手は戦術的にも技術的にも全員が優れている」

──試合後にはPKを失敗した満田誠選手や川村拓夢選手が涙を流していたが、彼らに声をかけたのか?
「試合に負けたことで悲しむことはあるが、彼らがPKを失敗して負けたことで悔やんだり責任を感じたりすることはないと伝えた。負けたのは彼らだけでなく、自分たち全員が負けたということ」

──1週間後にルヴァンカップ決勝が控えているが、今日の敗戦から切り替えるにはどのような行動になるのか?
「これもスポーツの一種ということで負けたチームは次の挑戦に向けてしっかり立ち上がっていかないといけない。そこをやっていきたい」

──PK戦では直前に失敗していた満田選手が5人目で出てきて驚いたが、PKを蹴る人選や順番はどのような考えがあったのか?
「マコ(満田)はPKを蹴る選手として適しているのはある。また、試合の中で失敗していたので、それを引きずらないために、早く次の成功をすることで切り替えさせる狙いももちろんあった」

フォト

photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo 本日も横浜まで多くのサンフレッチェファミリーの方々にお越しいただきました。皆さまの力強い声援を勝利へ繋げられず、申し訳なく思っております。次のルヴァンカップ決勝こそは、優勝を勝ち取れるように精進します。最後まで熱い声援、ありがとうございました。

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