10.22 13:05

ルヴァンカップ プライムステージ 決勝 vs. セレッソ大阪
OTHER国立競技場

試合終了

サンフレッチェ広島 広島
2
1
セレッソ大阪 C大阪
  • 後半45+6分
    ピエロスソティリウ
  • 後半45+11分
    ピエロスソティリウ
0
前半
0
2
後半
1
  • 後半8分
    加藤陸次樹

試合の見どころ

 サンフレッチェの反骨心が問われている。9年ぶりの舞台となった16日の天皇杯決勝・甲府戦ではPK戦までもつれる死闘の末に敗退。“カップ戦の初タイトル獲得”という周囲の大きな期待が寄せられていたのはもちろんのこと、チームにとっても悲願の天皇杯制覇まであと一歩へ迫っていただけにショックは当然ながら大きく、現実を受け入れるのに時間のかかる敗戦となった。だが、立ち止まってもいられない。広島にとって幸運だったのは、今度はルヴァンカップでの“決勝”がすぐにあることだった。「過去にあることはもう変えられない。変えられるのはここから先にあること。スポーツもそう、人生もそう。後ろ向きになってはいけない。前に進もう」。甲府戦後のオフ明け初日の練習で選手にそう語りかけたミヒャエル・スキッべ監督の下、紫軍団は懸命に前を向いて1週間の準備を進めてきた。
 そして、今回の決勝は奇遇にも気持ちの強さが求められることになった。“天皇杯ショック”を振り払いたいサンフレッチェに対し、相手のC大阪も昨年はルヴァンカップ決勝へ進んだものの名古屋に敗れてタイトルを逃しただけでなく、今季は3度の広島戦ですべて敗戦。リベンジの想いは相当に強く、強いメンタリティーで臨んでくるのは確実だ。どちらも今季はリーグ優勝の可能性が消滅した中で、残すルヴァンカップのタイトルを獲るために白熱の戦いが繰り広げられるのが必至。まずはタイトルを欲する気持ちで負けてはならない。
 その上で広島としては、今季のスタイルである“アグレッシブな戦い”を披露することが勝利への重要な道だ。「C大阪と対戦した3試合を思い出してほしい。全部勝ったが、流れによっては負けてもおかしくなかった」とスキッべ監督が認めるとおり、C大阪には今季3戦3勝とはいえ、内容では負けているゲームもあった。小菊昭雄監督が築き上げている攻守における組織的な戦いは洗練されており、ボールを大事にする流動的な攻撃、そして前線からのアグレッシブな守備は脅威だ。また、元日本代表の清武弘嗣といった経験豊富な選手だけでなく、上門知樹や為田大貴、毎熊晟矢など活きの良いアタッカーも健在。「C大阪は自分たちと同じぐらいのクオリティー」(スキッべ監督)と力は五分五分なだけに、勝利するにはお互いがスタイルを出し尽くした中で、わずかな差で上回れるかどうかとなる。
 だからこそ、天皇杯の教訓を生かさなければならない。スキッべ監督が敗因の一つに挙げた前半は、やはり「今までで一番良くない前半だった」。それを認めた上でC大阪戦に臨む紫の戦士たちに対し、指揮官は強い姿勢を求めた。
「最初の1秒から最後の笛が鳴るまで、すべてを出し切ろう」
 一人ひとりが心技体のすべてを出し尽くし、これまで築き上げてきたチームスタイルを存分に披露すること。失うものは何もない。カップを獲りに行くだけだ。天皇杯の涙をルヴァンでは歓喜の涙へと変えるべく、広島は国立競技場ですべての力を発揮する。

監督 試合前日コメント

「ここまでプレーオフを含めて多くの試合を戦って決勝に来た両チームということで、明日は非常に面白い試合になる思っている。我々もルヴァンカップに力を入れてきたチームだし、すべてを出していきたい。先週は天皇杯の決勝で敗れてしまった中で、また今回の相手も強敵であるC大阪。リーグ戦を見ても分かるとおり、上位を争っているC大阪とここで対戦できる。非常に面白い試合になると思っている」

──広島は先週の天皇杯で悔しい思いをしたと思うが、明日の決勝に向けてチームの雰囲気はどのように見ているか?
「先週の敗戦はすぐに切り替えるのはやはり難しく、2~3日かかった部分はある。甲府戦の前半は特に酷い内容だったし、後半に盛り返したが、勝利にまで繋がらなかった。PKに関して言えば、どちらかに転んでしまう。ただ、その敗戦から時間が経ち、今回のファイナルに向けて非常に良い準備ができた。雰囲気も良い中でトレーニングができた手応えがある」

──今季3度の対戦はすべて広島が勝利しているが、C大阪の内容も素晴らしかった。C大阪の印象について。
「これまで3回対戦しているが、ホームで対戦したリーグ戦の時は先制され、そこでもし追加点を取られていたら、我々は追い付くことができなかった試合展開だったと思う。大阪で戦った天皇杯のゲームもほとんどの時間でC大阪に支配されていた中で最後の最後でひっくり返すことができた。どの試合も負けていてもおかしくないゲームだったと感じている。今回の決勝に関しては、これまでの3試合がどうこうよりも、『これは決勝である』ということと、レベルが拮抗しているチーム同士の対戦だと割り切って考えたい」

■佐々木翔 選手 試合前日コメント
「明日の試合は非常に難しくなると思う。どちらのチームが自分たちのサッカーを出していけるか、良さを出せるかがカギになると思う。僕らは先週、一つの大きなタイトルを獲ることができなかったが、この決勝という舞台が残っていることは幸せなこと。ただ、ここでチームとして勝ち取らないと先に進めない。僕らの未来にとっても非常に重要なタイトルだと思っている。いい試合をして、必ずカップを持ち帰りたいと思う」

──今回は30回目の記念大会。そして聖地・国立での試合となる。多くのお客さんが入る予定の中で試合ができる喜びはどのように感じているか?
「先ほど少し観客席が見えた時にこんなにも素晴らしいスタジアムができていて、その中でプレーできることに幸せな感情を持った。明日の試合は素晴らしいものになると思うし、サッカーファンの皆さんや応援してくださるファン・サポーターの皆さんも楽しみにしていただけたらと思う」

──広島が勝てばルヴァンカップ初制覇となる。タイトルを獲る意味をどのように捉えているか?
「このクラブがルヴァンカップを獲っていないのは皆さんご存知のとおり。このチームが歴史を変える、このチームの未来のためにこのタイトルを獲得する。それは重要なことだと思うので、この大きなチャンスを大いに生かしてタイトルを持ち帰りたい」

──今季3度の対戦はすべて広島が勝利しているが、C大阪の内容も素晴らしかった。C大阪の印象について。
「率直に感じるのは個の力もあり、組織としても素晴らしいのは対戦していて感じる。戦術でも僕らの脅威になっていた。非常に素晴らしい相手だと思うし、強いのは何度も対戦しているので分かっている。結果にこだわって戦っていきたい」

監督 ハーフタイムコメント

・早く正確にボールを動かすこと。
・相手の背後を積極的に狙うこと。
・セットプレーも集中して狙っていこう。

ゲームレポート

 ついに悲願達成の時を迎える決勝となった。
 天皇杯でのショッキングな敗戦から1週間。今度はルヴァンカップでの最終決戦に臨んだ紫軍団は、「最初の1秒から最後の笛が鳴るまで、すべてを出し切ろう」と言うミヒャエル・スキッべ監督の言葉をまさに体現した。どちらかと言えば、前半の主導権はC大阪にあったかもしれないが、広島は臆することなく武器である前線からのハイプレスを仕掛けていく。15分の加藤陸次樹のシュートをGK大迫敬介がビッグセーブするなど、攻められた時には粘り強く対応し、攻撃では左の川村拓夢、右の野上結貴のサイドを生かしながら隙を伺う膠着した展開。球際でもお互いが激しくぶつかり合う白熱した戦いは、前半を0-0で折り返した。
「早く、正確にボールを動かしていこう!」。ハーフタイムにミヒャエル・スキッべ監督がそう攻撃の修正を施して迎えた後半、試合は早い時間に動いた。53分、佐々木翔のバックパスを加藤に奪われると、飛び出したGK大迫がかわされてゴールに流し込まれ失点。手痛いミスによってリードを許す苦しい展開となってしまった。
 だが、このゴールで広島はより攻撃へのパワーを強めていった。「アンラッキーなことにキャプテン・佐々木翔のパスミスから失点してしまったが、そこからさらに強く前に行こうという気持ちが芽生えたと思っている。ピエロスを交代で入れたメッセージとして『もっと前に行こう』ということで、変わっていった」(スキッべ監督)。63分にボランチ・松本泰志を下げてFWのピエロス・ソティリウを投入するなど攻撃への圧力を強めると、C大阪を押し込む展開へ。満田誠や森島司らが果敢にゴールを狙うだけでなく、セットプレーでも佐々木がヘディングシュートを放てば、75分には左サイドを攻略した森島司のクロスに川村拓夢が頭で合わせる決定機を迎えた。どれも相手守備陣の粘りやGKの好セーブもあってゴールを割ることはできなかったが、勝負を大きく分けたのが79分のマテイ・ヨニッチの一発退場だった。
 数的優位となった広島は猛攻を仕掛け続ける中、試合はアディショナルタイムへ突入したが、迎えた90+6分、ペナルティーエリア内で相手のハンドを誘ってPKを獲得すると、これをピエロスが落ち着いて決めてついに同点。これで勢いに乗った広島は攻撃の手を緩ませずに攻め続けると、その5分後の90+11分だった。右からの満田のCKからピエロスが足でゴールネットを揺らして逆転。最後の最後の5分間で劇的な逆転劇を作り出した広島がルヴァンカップ初制覇を達成した。
 アディショナルタイムでの奇跡的な逆転勝利に喜びを爆発させる広島の戦士たち。「チームの成功のために自分たちの限界を超えるプレーを見せてくれたと思っている。やっとサンフレッチェがカップを広島に持って帰ることができた。本当に嬉しく思っている」とスキッべ監督も喜びを爆発させた。

監督 試合後コメント

「C大阪は再び自分たちを苦しめるような素晴らしいパフォーマンスを見せたと思っている。今までの3試合もそうだったように、前半は非常に苦しんだ。勝利の世界なので残念なことだが、C大阪も勝利に値するパフォーマンスだったと思っている。後半は我々にとってアンラッキーなゴールを許してしまった。そこから時間が経つにつれ、我々は素晴らしいパフォーマンスを見せられるようになったと思っている。そこからの展開が今日の勝利を決定付ける流れになったと思う。チームの成功のために自分たちの限界を超えるプレーを見せてくれたと思っている。やっとサンフレッチェがカップを広島に持って帰ることができた。本当に嬉しく思っている」

──ピエロス・ソティリウ選手が同点のPKを蹴る直前、先週の天皇杯のシーンが思い浮かんだが、監督はどのような心境で決まった瞬間はどのような思いになったか。また、昨日に広島でプレーした工藤壮人選手が逝去されたが、選手にどのような話をしたのか?
「PKの判定になったことが大きなポイントだった。ピエロスは経験値の豊富な選手でこれまでもPKをたくさん決めてきていた。彼ならしっかり決めてくれると思っていた。
工藤選手が亡くなってしまったのは非常に辛いこと。若くして亡くなったのは残念。彼の奥さんと娘さんにお悔やみを申し上げたい。私はここまで約1年間、広島で働かせていただいているが、このクラブは彼の家族のそばに常にいるクラブだと思っている」

──前半は苦しんだと思うが、後半に向けてどのような修正をしたのか?また、先制された後にどのように試合を変えていったのか?
「前半も残り15分ぐらいは主導権を握れている感触があった。それは後半も続けていきたいと思った。そこからアンラッキーなことにキャプテン・佐々木翔のパスミスから失点してしまったが、そこからさらに強く前に行こうという気持ちが芽生えたと思っている。ピエロスを交代で入れたメッセージとして『もっと前に行こう』ということで、変わっていった。今日も交代で入った選手が非常に良い働きをしてくれて、逆転劇を生んでくれたと思っている」

──天皇杯決勝から中5日で選手たちも落ち込んだところもあったと思うが、見事に挽回した。試合前には練習を含めて選手にどういった声かけをしたのか?
「2日ぐらい沈んでいたが、我々はアスリートなので天皇杯の敗戦を受け入れて、週明けから非常に良いトレーニングができたと思っている。C大阪には今季4回対戦して4回とも勝てたわけだが、内容によっては4回とも負けてもおかしくないような、実力の拮抗したチームだと思っている」

──後半は相手が一人少なくなってから難しい展開になると思ったが、そこからどういった指示を選手たちに送ったのか?
「数的同数の時から主導権を握れるようになっていたので、そのまま行こうと思っていた。塩谷(司)、野上(結貴)とそれまで良いプレーを見せていたが、ワイドで起点を作りたいと思い選手交代した。また、前でクリエイティビティーが必要だということで、柴﨑晃誠を投入して点を取ろうと思った」

──就任1年目でタイトルをもたらしたが、どのように感じているか。また、勝利した自身へのご褒美はあるのか?
「我々のコーチ陣が素晴らしかったことに尽きる。来日が2カ月ぐらい遅れてしまったが、それまでに良い準備ができていたし、チームが一つにまとまるところまで持っていけていたのが非常に大きい。コーチ陣を褒めたい。また、我々は天皇杯にしてもルヴァンカップにしても、Bチームで臨んだことはなかった。それも勝利の要因だと思っている。カップ戦もリーグ戦もすべて同じように重要だという立ち位置で取り組んだ。(ご褒美は)自分自身というよりも、このクラブで、このチームでタイトルが獲れた。カップ戦は1回目だということ。そのことがご褒美だと捉えている。今日は本当に忘れられない1日になった」

──佐々木翔選手の(1失点目の)バッグパスのミスは珍しいシーンだと受け止めたが、その後は集中を切らさずプレーを続けた。監督から見て佐々木選手のキャプテンシー、人間性を含めてどう評価しているか?
「ファンタスティックなキャプテンですごく満足している。佐々木翔だけでなく、ベテラン選手に関しては全員そう思っている。塩谷、柏(好文)、青山(敏弘)、柴﨑といった選手たちは、今でも情熱的にサッカーに取り組んでいるし、そういった姿勢が若い選手たちの見本になっている」

──今年はスキッべ監督になってチームは成長したと思う。相手も対策をしてくるようになってきた中で今回は跳ねのけての優勝であり、まだまだこれからも可能性のあるチームだが、今後の積み上げはどう考えているか?
「今シーズンはまだ終わったわけではなく、残り2試合、非常に重要な試合が残っている。リーグ戦ではC大阪、FC東京と3位の順位を争っている。シーズンが終わった後に自分たちをしっかり分析して、自信が過剰になるのではなく、来季はもう一度、ディフェンスは安定させて、オフェンスはクリエイティブにする部分をさらに追求していく必要がある。昨年までは中位で、カップ戦とは少し縁がなかったようなクラブだが、今季は上位に進む勢いがあったと思っている。上がっていくというよりも高い位置をキープし続けることのほうがスポーツでは難しい。来年も魅力的で成功していくサッカーを目指して行きたい。今までドイツ・ブンデスリーガ、トルコ・スーパーリーグ、それからスイスでも監督をやってきたが、リーグの中でこれだけ差がないのは日本が初めてだった。また、先週の天皇杯で経験したように2部リーグのチームがこれだけのレベルを保てている国なので、(上位キープを)確実にしていきたい」

フォト

photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo photo 天皇杯での横浜に続き、東京にも多くのサンフレッチェファミリーの方々にお越しいただきました。皆さまの熱い声援が劇的な逆転勝利を呼び込んでくれました。最後まで力強い後押し、ありがとうございました。

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