サポーターズ・カンファレンス議事録

チーム強化と編成について(強化部長 足立修)

 サンフレッチェファミリーの皆さま、いつもチームを後押ししていただき、ありがとうございます。このたびは、コロナ禍にあって「サポーターズ・カンファレンス」という形で皆さまとお会いしてのミーティングとはなりませんでしたが、たくさんのご意見をいただきました昨年の戦いや、今季のチームの編成などを中心にお伝えしたいと思います。

 まずは昨年の戦いについて、たくさんの厳しいご指摘、ありがとうございました。特に天皇杯の敗戦に関しては、あってはならない結果だったと重々承知しており、選手・スタッフ一同、皆さまのご意見を真摯に受け止めています。
 一方でリーグ戦の戦いを振り返ると、過去に例をみない17連戦という厳しい状況下で、かつ20チーム中4チーム、全体の20%が降格するというプレッシャーを受けながらの戦いでもありました。降格に対する危機感は、例年以上に多くクラブが持っていたはずです。そのなかでしっかりと残留という最低限の結果を残せたことには、我々も安堵しています。17連戦という未知の戦いのなかで、若手選手を起用しながらもある程度の勝点を積み上げることができました。もちろん、痛い思いをしたこともありますが、若手選手たちがベテランの助けを借りながら成長を遂げ、チーム全体での底上げはできたと思っています。
 そういったなか、チームは今季、1つのチャレンジとして、ミヒャエル・スキッベ監督を新たに招聘することになりました。コロナ禍という困難な状況ですが、恐れることなくチャレンジしていくべきタイミングだと考えています。2017年、チームは一度、降格の危機に瀕しましたが、その後の4年間で城福浩監督にチームを根幹から立て直していただき、モダンなフットボールのベースを作ることができました。若手選手が台頭し、ベテランも負けじと成長している今だからこそ、次のステップへと進むために、国際経験豊富な監督を招聘し、チームに刺激を与えることで進化させていきたいと思っています。
 我々が目指しているのは、ボールを取られても素早く奪い返し、相手の自陣に鋭く切れ込んでいくモダンなフットボールです。ボールを握り、強固なディフェンスにさらに磨きをかけていくことで、2年後、まちなかに新スタジアムが完成するときには、優勝争いができるチームにしたいと考えています。
 今季は、昨年とほぼ同じメンバーで戦うことになりますが、他チームからのオファーがあったなか、サンフレッチェでやりたい、スキッベ新監督の下でプレーしたいという思いで、ほとんどの選手が残ってくれました。これほど在籍選手が移籍という選択をしないのも、例を見ないことだと思います。このメンバーが残ってくれたことが、最大の補強といっても過言ではありません。
 ただ、やはりチームに刺激を入れることが必要だと考え、監督以外のコーチングスタッフは一新しました。迫井深也ヘッドコーチは4年間、城福監督の下でコーチを務めたスタッフです。チームのことをよく把握しており、これまで積み重ねてきたものを継承する役割を期待しています。有馬賢二コーチはJ2での監督経験もある方で、監督だったからこそ見える景色を、コーチの立場でよりきめ細かくチームに落とし込み、スキッベ監督のサポートをしていただきたいと思っています。菊池新吉GKコーチは、多くの方がご存知でしょう。自身もJリーガーとして活躍し、長年、川崎フロンターレでもコーチを務めていました。GK王国広島をさらに進化させるには、まさに適任だと考えています。そして、ウマルコーチ。ドイツのハノーヴァーやトルコのクラブでコーチを務めており、ハイレベルで最先端のサッカーをチームに浸透させてくれるはずです。ウマルコーチは指導者を目指していたとき、スキッベ監督の下で研修を受けており、監督の目指すサッカーに共感しているコーチで、監督自らの推薦もありました。彼ら経験豊富なコーチングスタッフで、選手の後押しをしたいと思っています。

 選手の陣容については先ほどもお話しした通り、現有戦力の残留が主ですが、彼らに加えて、期限付き移籍から野津田岳人選手と川村拓夢選手が復帰しました。彼らはJ2でしっかりと成績を残した選手たちで、チームにとっての戦力アップといえます。選手の期限付き移籍にも数多くのご意見をいただきましたが、新たな場所で汗と涙を流し、経験を積んでクラブに還元するという形は、今のJリーグでも主流になってきています。もちろん、自チームで育てることができれば一番よいですが、ピッチに立てる人数は限られており、選手にとってはやはり実践を積むことが成長につながるものです。我々は自クラブで育てること、そして修行という名の他クラブへの期限付き移籍を両輪として、アカデミーから育ってきた選手を成長させていきたいと考えています。
 今季は新たに土肥航大選手が水戸に期限付き移籍をしました。今季、サンフレッチェでの活躍を期待していた方も多く、彼の移籍についても複数のご意見をいただきましたが、本人も出場機会を求めているなかで、悩んだ末の決断となりました。水戸の中心選手となって活躍し、年間を通して戦える体力と精神力をつけてくることは、決して遠回りではなく、むしろ近道にもなりえます。土肥選手以外にも、松本大弥選手が金沢に、イヨハ理ヘンリー選手が熊本に期限付き移籍をしておりますが、サンフレッチェの名前も背負いながら、J2でしのぎを削ってもらいたいと思っています。
 現在のチームの編成は29名となりますが、これで完成だとは思っていません。選手の情報は常に収集していますので、夏の移籍期間も含めて、必要と判断した場合には新たに加入する可能性も十分にあります。特に、皆さんからのご指摘にもあった通り、得点力の改善に向けては取り組んでいかなければいけません。スキッベ監督とも話し合いながら、選手を補強するべきか、戦術面を含めて全体で補っていくのか、見極めていきたいと思います。昨年は引き分けが13と勝ちきれない試合が非常に多かったですが、勝点1を3にしていくためにも、決定力不足の解消にはしっかりと取り組んでいきます。

 最後に、アカデミーについても少しお話しさせていただきます。今季から新たにアカデミーダイレクターというポジションを設立し、昨年までトップチームのヘッドコーチ、そして監督を務めた沢田謙太郎氏が就任することになりました。沢田氏は、皆さんもご存じの通り、サンフレッチェのジュニアユースやユースといったアカデミーチームを率いた経験もあり、さらにはトップチームでもコーチ、監督を務めました。トップチームで活躍するために必要なものをアカデミーに継承していく役割を、沢田氏には担ってもらいたいと思っています。
 今季からジュニアチームへのアプローチやスカウト部門も充実させ、アカデミーの強化にも、これまで以上に努めていくつもりです。スキッベ監督はフル代表からアカデミーチームと幅広い年代の指揮を執った指導者のスペシャリストであり、クラブとしても昨年からドイツの1.FCケルンと提携しました。このように様々な角度から、現代の最先端の情報をチームに落とし込みたいと考えています。それをサンフレッチェが積み上げてきた育成メソッドと融合させ、より逞しく、クオリティの高い選手を育成し、トップチームはもちろん、日本代表にもなれるような選手を輩出していきたいと思っています。短期間で結果が出るものではないかもしれませんが、未来のサンフレッチェ広島にもぜひ、ご期待ください。

 今季はまずいち早くJ1残留の目安となる勝点を積み重ね、そこに到達することができた段階で1つでもさらなる上の成績、順位を目指していきたいと考えています。スキッベ監督の下、チーム一丸となって戦って参りますので、選手への後押しをよろしくお願いいたします。