サポーターズ・カンファレンス議事録

スタジアムパーク建設について(総合戦略室長 兼 スタジアムパーク準備室長 信江雅美)

 みなさん、こんにちは。総合戦略室長 兼 スタジアムパーク準備室長の信江です。コロナ禍の影響により、今年もサポーターズカンファレンスを開催することができず、スタジアムパーク建設について、直接、サンフレッチェ・ファミリーの皆さんにご報告できないことを残念に思っています。

 昨年の報告から後の、スタジアムパーク建設の動きについて説明します。
 まず、3月31日に「広島市サッカースタジアム整備等事業者選定審議会」から審議結果が答申され、新サッカースタジアム優先交渉権者に、大成建設株式会社を代表企業とするJV(大成建設株式会社、株式会社フジタ、広成建設株式会社、株式会社東畑建築事務所、株式会社環境デザイン研究所、復建調査設計株式会社、株式会社あい設計、株式会社シーケィ・テックを構成者とする共同事業体)が選定されました。その後、市議会から承認を受け、6月29日に正式契約が交わされました。

 さらに8月31日には「中央公園広場エリア等整備・管理運営事業」(Park-PFI事業)の公募設置等予定者にNTT都市開発株式会社を代表企業とするコンソーシアムが選定され、諸手続きを経て1月21日に公募設置等計画が認定されました。なお、認定計画提出事業者は、NTT都市開発株式会社、株式会社エディオン、広島電鉄株式会社、株式会社RCC文化センター、株式会社中国新聞の5社です。

 新スタジアムの設計は着実に進み、10月25日に新スタジアムの基本設計がまとまり、1月21日には実施設計の概要が広島市のホームページに公開されました。
 建設現場では埋蔵文化財発掘調査を完了し、整地などの準備工事を終えて、いよいよ2月初旬には本工事の着工を迎えます。

 スタジアムパークは、「国際平和文化都市 広島に相応しいみんながつながるスタジアムパーク」という基本コンセプトを念頭に置き、「まちなかスタジアムの実現」「みんなでつくるサッカースタジアムの実現」「広島らしさの発信」という基本計画に示された3つの考え方に基づいて、「開かれた回遊型スタジアムパーク」「スタジアムパークがつなぐ『交換の環』」「みんなのシンボルとなる『希望の翼』」という3つのコンセプトを踏襲した設計となっています。公園から川までつながるスタジアム2階レベルの「パークコンコース」。また試合日に観客の主動線になるスタジアム3階レベルの「メインコンコース」。この2つのコンコースは立体的につながるように工夫されています。また、スタジアムと広場をつなぐ「スタジアムアクセス ゾーン」には、試合日にも非試合日にも機能するミュージアムやレストラン、ショップからなる多機能施設が配置されています。

 さて、この新スタジアムは7層のフロアで構成されています。フロア構成の要点は次のとおりです。

 1階メインスタンド側に配置する諸室は、チームエリア、運営エリア、メディアエリア、VIP・VVIPエリアという4つの用途にゾーニングされ、使い勝手の良さを追求しました。運営エリアとメディアエリアの諸室は非試合時に会議室や教室など多用途な貸室として活用できるように計画されています。
 VIPエリアに設けられたトンネルラウンジは新設のスタジアムとしては国内初の試みです。ミックスゾーンでの試合前のチームの雰囲気を感じ取ることができます。
 スタジアムと広場(公園)の接続部分にあたる東側エリアには、大階段とゆったりとしたスロープを設けています。この大階段は芝生広場を眺めるベンチとして、またイベント時の観客席としても機能することを意図しています。また、賑わい施設として、店舗区画やミュージアムを配置しました。

 2階に上がると、日常的に公園から川までつながるパークコンコースがあります。サービス車両用のスロープは北側に、河川へのデッキは歩行者専用とすることで、歩車分離を行なっており、河川へのデッキはバスベイ、タクシーベイにもアクセスできるようになっています。このパークコンコースは試合時にはサイドスタンドへの観客動線になります。公園側のデッキは試合時には人流をさばく溜まり空間として機能するとともに、テラス部分の大階段に繋がっており、そこにはレストランや店舗といった賑わい施設や、試合時には託児所として機能するキッズスペースを設置しました。
 またメインスタンド側には、VVIPラウンジやVVIP室、VIPラウンジとVIP観戦席が配置され、VVIPとVIPの動線は確実に分離されています。

 3階は試合時の主動線となるメインコンコースのフロアです。約10メートル幅の余裕のあるコンコースからは、様々な場所からピッチを望むことができ、自由な観戦スタイルを実現します。多くの飲食売店を配置しており、魅力あるスタジアムグルメを提供します。
 メインスタンド、バックスタンドの一般座席の前後幅は850mm、横幅は500mmとし、ゆとりある座席としています。横幅500mmはサッカースタジアムとしては、かなりゆったりとした座席幅だと思います。

 4階のメインスタンドにはスカイボックスやビジネスラウンジなどスポンサー対象にした諸室があります。常設のセンサリールームもメインスタンド側に配置しています。またバックスタンド側はバラエティシートを中心に、グループや家族連れなどを対象とした空間を設計しました。家族連れも想定したこのフロアにも、キッズテラスを設けており、子どもを見守りながら、観戦が楽しめる空間としています。
 非試合時においては、スカイボックスやビジネスラウンジは、2階のVIPラウンジと併せて、ホスピタリティーが必要なイベントや催事のために貸し出すことを計画しており、仕様や設備も複合利用を想定しています。

 6階・7階は主にメディアフロアです。複数局のカメラポジションを確保できる計画としており、Jリーグで常に使用するカメラポジションは常設、大規模なカップ戦や国際大会時のみ使用するカメラポジションも仮設対応できるように計画しています。

 観客スタンドについては、メインスタンド、バックスタンド側でいわゆる「ゼロタッチ」を採用することで、ピッチに近い目線での観戦が可能です。最前列からサイドラインまでの距離は8メートルで、Jリーグの規定である5メートルの天然芝エリアの外側に、イベント開催時に有効な、軽車両が走行可能な3メートルのサービス動線を設けました。
 また、2層目上段スタンドの傾斜角を、客席前に観戦に邪魔な手摺を設けなくて良いギリギリの34.5度に設定することで、臨場感と安全性を両立する絶妙な傾斜角度を実現しています。

 昨年も申し上げましたが、我が国では、少子高齢化が急速に進んだ結果、2008年をピークに総人口が減少に転じています。現在、総世帯数は単独世帯の増加にともない増加傾向にありますが、将来的にはこれも減少に転ずるものと思われます。
 少子高齢化対策は国全体の問題ですが、一方で、地方では、子育て世代の「住みやすさ」を実現することで、年少人口や生産年齢人口の増加を図ろうという動きが顕著です。過疎化に苦しんでいる町村が移住促進のために様々な施策を打ち出していますが、同じことが都市部でも起きています。子育て世代に居住してもらうための魅力ある環境整備は、地方創生に欠かせないテーマと言えるでしょう。広島県が魅力ある地域であり続けるために、その中枢都市として広島市が中枢性や拠点性をさらに高めていくことが重要です。
 スタジアムパーク構想は、アフターコロナの時代を見据えて、世界に誇れるサッカースタジアムを中心に、広域的に多世代の人々を惹きつける魅力的な施設や機能が集積した公園空間を整備し、広島都心部の回遊性を高めるためのプロジェクトです。
 まず、遊びに行きたいと思える魅力を創造する。そしてここで働きたいと考え、広島に住みたいと考えていただく。そして最終的には「暮らしたい」、つまり自分の人生を広島に置いていいと思えるような街に成長すること。「スタジアムパーク プロジェクト」は、広島を「遊びに行きたい」「働きたい」「住みたい」、そして最終的には「暮らしたい」街にしていくことで、広島の都市格の向上につなげていこうというものなのです。

 当社が構想しているスタジアムパークには、特徴のある7つのゾーンがあります。
 まず、「サッカースタジアム ゾーン」。スタジアムパークの中核施設であるサッカースタジアムはサンフレッチェのホームスタジアムであり、選手・チームにとって最新最適な試合環境を実現するということはもちろんのこと、試合を観戦される観客の皆様に、一流の観戦環境を提供します。Jリーグのスタジアム基準を満たすだけでなく、国際試合に対応する世界水準の機能を備えた施設です。
 下段スタンド最前列席を競技や多目的活用や通風等に支障ない限りの範囲でピッチに近く配置することや、上段スタンドの傾斜角を適正にとることにより、後方席からでも比較的ピッチを近くに感じられる、迫力ある観戦環境を実現し、サンフレッチェファミリーやサッカーファンにとって十分に満足いただけるものにしたいと考えています。
 一方で、このスタジアムでは、初めてサッカーの観戦にいらっしゃったお客様、初めてスタジアムを訪れた方がストレスなく思いっきり楽しめ、繰り返し行きたくなる空間を実現します。高品質なサービスを提供するVIPルーム、プレミアムラウンジなどのホスピタリティエリアを備えることは当然ですが、一般シートにおいても、前後左右に十分な余裕が感じられる快適さが求められます。また、グループで、家族で、カップルで、もちろん1人でも、多様な観戦スタイルで、自由に楽しめる多彩なバラエティシートを用意します。ピッチを望む周回コンコースには、魅力的な飲食店舗を多く設置。また、映像、音響、照明装置等を一体的に運用した演出により、試合以外にもエキサイティングなコンテンツを提供します。これらにより、今までにない、初めていらっしゃったお客様をメインターゲットに据えたサッカースタジアムの実現を目指します。
 また、試合日以外に一年中にぎわう施設として、日常的に利用しやすく魅力ある店舗をスタジアム内に誘致するとともに、都心部にありながら、質の高いランドスケープ(景観)を有するメリットを生かした会議室・催事場としての空間貸出、集客力のあるイベント開催などが可能な設備を整備します。

 次に、スタジアム東側の広大な「芝生広場 ゾーン」は、都会の真ん中にありながら青空と広大な芝生空間を満喫できる空間であり、日常的に「楽しい」に出会える、多彩かつ魅力的なイベント開場としても活用します。
 スタジアム東側面の「スタジアムアクセス ゾーン」は、世界水準のスタジアムに自由にアクセスでき、スポーツコンテンツを中心に新たな魅力あるアクティビティを提案するゾーンです。
 広場南側は「パークライフスタイル ゾーン」。芝生広場を活かし、広々とした公園の心地良い環境と新しい都市型ライフスタイルを提案するゾーンです。主に県民・市民に親しまれ活用されることを想定した商業集積を計画しています。
 広場東側は「ひろしまスタイル ゾーン」。広島を訪れる観光客を意識し、公園の心地良い環境を最大限生かしながら、広島の様々なモノやコトを体験できるゾーンです。
 広場北側の「スポーツ&コミュニティ ゾーン」には、子供の知育や県民の体力作り、県民・市民の健康寿命増進を意識したスポーツアクティビティ機能を配置します。
 スタジアム西側は「リバーサイド&ウェルネス ゾーン」。旧太田川の親水空間を活かし、リバーサイドの眺望を活用した商業誘致や、自然とのふれあいを通じて、心身の健康促進や、県民・市民の交流を促進するゾーンです。
 商業をミックスした集客力を持つ先進型都市公園としては、大阪のてんしば(天王寺公園)や大阪城公園、名古屋の久屋大通パークが大いに参考になります。また、親水空間としては、富山の富岩運河環水公園や大阪の中之島公園を成功事例として挙げることができます。

 さらに、スタジアムパークは次世代の公共空間として、環境問題への配慮、ユニバーサルデザインやインクルーシブデザインの採用にも積極的に取り組みます。一例として、スタジアムの観客席に、常設の施設としては日本初の試みになる、センサリールームの設置を計画しています。
 また、感染症対策を十分考慮した設計であることも、忘れてはならない重要なポイントです。

 このような7つの魅力的なゾーンからなるスタジアムパークは、年間310万人の集客を目指します。エリア別では、広島市内から163万人、広島市を除く県内から82万人、県外から65万人を計画しています。
 スタジアムパーク建設事業による経済効果は、広島市の試算によると、建設投資に関する直接効果が約460億円、飲食や宿泊、交通、ショッピングの費用などの波及効果が開業後20年間で約6,300億円にのぼり、合計で約6,760億円(開業後20年間)という莫大な経済効果が算出されています。

 広島市の都心部に、世界に誇れるサッカースタジアムと、青空と広大な芝生広場を満喫できる憩いの空間を中心とした「スタジアムパーク」の実現をめざすプロジェクトを、当社は「HIROSHIMA スタジアムパーク プロジェクト」と名付け、一昨年12月9日に当クラブの公式サイトにある新スタジアムページを全面リニューアルし、情報発信に努めてまいりました。
 そして、3月31日の新サッカースタジアム優先交渉権者の選定を受け、いっそうの機運醸成を目的に、4月16日に外観と鳥瞰のイメージパース14枚、4月23日に内観と鳥瞰パースパースを23枚、スタジアムパーク・プロジェクトの公式サイトに掲載しました。また、4月30日には、独自で公募資料に基づいて作成したイメージCG動画を公開しました。これまでにも独自CG動画を2作公開してきましたが、特にこの第3弾となる独自イメージCG動画は各方面の話題を呼び、各局のテレビニュースでも取り上げられました。サンフレッチェファミリーの皆さんだけでなく、多くの県民、市民の方々から、「完成がとても楽しみだ」「建設されたら絶対に行ってみたい」というような、ポジティブなご意見が多く寄せられており、スタジアムパークへの期待の高まりを実感しています。
 個人から寄せられた寄付金は3億4千万円にのぼり、商工会議所が中心となって募っている企業からの寄付金も当初の計画10億円を大きく上回る16億円に達しようとしております。これにエディオン様からの寄付金30億円、マツダ様からの寄付金20億円を加えると、約69億円という多額の寄付が寄せられています。

 スタジアムはDB方式、公園の広場部分はPark-PFIという異なる方式で整備されますが、例えるならば、スタジアムが家だとすれば、公園広場は庭です。家と庭が異なるコンセプトであれば、ちぐはぐなものになってしまします。また、人々を魅了し、おのずから訪れたくなるようなランドスケープや、その場に身を置きたくなる魅力ある統一された世界観を持った空間であることが必要です。

 当社は、スタジアムパークが、都市(まち)に向かって、訪れる人々に対して、自由に開かれたコンセプトで構想され、多世代の方々にとって、統一された魅力ある世界観に基づいたデザインであるべきと考えています。多くの県民・市民に日常的に親しまれ、県外の方も何度も訪れたくなる魅力的な空間。周辺の原爆ドームや広島城など歴史的ランドマーク施設との調和や街の景観を十分に考慮し、国際平和都市・広島にふさわしいシンボリックなランドマークであることが望ましいと思います。

 2024年春、国際平和文化都市広島の中心に、再びスポーツの熱気と感動が帰ってきます。世代や国をこえて、人が集い、楽しみ、歓喜し、憩う、まちなかスタジアム。それは、日本で初めての都心交流型スタジアムパークとして、サッカースタジアムと公園がひとつになってさまざまな施設や多目的な機能を融合させる、新しい感動共有拠点です。
 サッカーの夢と熱狂、緑と水のやすらぎ、そして街のにぎわいが色とりどりの笑顔を咲かせ、次の時代のエネルギーとなるように。明日を沸かせる広島の元気を、ここからいっしょに創造していきましょう。

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